以前イギリス人とラグビーについて話していた時、 「何故我々はラグビーをするのかって? はずんだ楕円のボールが有利な方向に転がるかは五分五分。ただひたすら努力をする姿勢を神に示すしかない、全力でタックルをし、走り、前に進まねばならない。偶然を必然にする重要性を学ぶためにラグビーをしている。」と聞いたことがあります。そういった、紙一重を良い側に持ってくる力、そのために努力を惜しまぬ才をセレンディピティと呼んでいました。「偶然から何かを発見してしまう力」など、セレンディピティには色んな解釈がありますが、私はこのイギリス人の捉え方が気にいっています。
多くの候補者と話をしていると、キャリアへの考え方が千差万別であることを痛感します。ある方からは、キャリアのゴールを明確に定め(例えば「社長」)、その逆算で いついつまでにこのポジションにつき、よって次はxx業界で△△のポジションに就きたい、という風にキャリア全体をコントロール化に置き「デザインする」志向を強く感じます。
逆に、ある別の方はキャリアのゴールは設定せず、個々の会社では頑張っているものの全体として「ドリフト感」がキャリアの流れからは漂ってしまっていたり。(その実、お話をすると個々のキャリアキャラが「立って」おり、とてもお話が魅力的であったりも)
また、別の方は、キャリアの節目においては精一杯「デザインの意思」を以って努力するものの、日ごろは目の前にあるミッションにひたすら情熱をもって打ち込み、多くの「一皮むける」ご経験をされていたり。
キャリアパスに正解はなく、多様な生き様があって然るべき、と考えています。そして、キャリアの節目・十字路に立ち会うことが多い私のような立場の場合、どのようなキャリアパターンであっても、偶然を良い必然にしてしまえる能力、セレンディピティ感を候補者の方々が日ごろから研ぎ澄ませておられるかが鍵のひとつと思います。志をもってキャリアをデザインすることがそれをもたらすかもしれませんし、また意図せぬキャリアドリフトすら自身の才能開花・発掘につなげてしまうしなやかな逞しさも大事と思います。
不可欠のスパイスのように効いてくるセレンディピティ、勿論、我々コンサルタントの側にも必要であることは言うまでもありません。