自身の転職プロセス

私の場合、新卒で入社した会社に20年勤めた後で現コンサルタント業に転じました。長くいすぎたせいか、会社を辞める際には大変なエネルギーを使い、最後のジャンプにはいくつかの出来事(これは後日のブログで書きます)の背中押しが必要でしたが、底流として、長きに亘っての大きく太い流れに導かれてこの世界に入ってきたように思っています。

<大学時代>

私が初めてヘッドハントという言葉を知ったのは、80年代前半で、大学のゼミで日米貿易摩擦の勉強をしている時でした。日本からの洪水的輸出によってアメリカの繊維や自動車産業が大打撃を受け、失業してしまう人の怒りが政治的圧力として、日本車叩き・日本バッシングへと向かっていた時代です。自動車産業で職を失った人がそう簡単に産業越えで転職できたりしない様を当時はLabor Fluidity Distortion(流動性の歪み)という言葉で表していました。ただ、力のある人、モーバイルなスキルを持った人は「ヘッドハンター」という職業人によって、他の成長インダストリーに移っていったという事実も知りました。  ヘッドハントという言葉に動物的でネガな印象を受けましたが、成長産業に人がシフトしていく上でとても重要な役割を担っている「意味ある仕事」との印象を持ちました。今、できるかぎりは「より成長産業・国際競争力ある産業へリーダーシップを持った人がシフトしていく」「ことに貢献しようとしているベースはこの頃の影響があると思います。、

<ソニー、人事・採用担当時代>

80年代後半、勤務していた会社がコンピューター事業(EWS、NEWS)立上げに再チャレンジする際、自社内に育っていない人材をコンピューターインダストリーから採用する際にヘッドハンティングの手法を使いました。ビジネス立上げにおいて、適切な人材を如何にスピーディーに集めるかが決定的なポイントである、という原体験をその時にしたわけですが、企業側採用担当として、初めてヘッドハンターなる職業の方に会う貴重な経験もしました。物腰柔らかい、しかし業界への知見の高さ・プロフェッショナルな対応・態度に大変感心をしたことを覚えています。おかげで一旦は立上げに成功したわけですが、成功は長く続かず、立上げに貢献できる人材と安定成長に必要な人材は別物なのだ、ということも学びました。当時の人事時代同僚曰く「留岡さん、いつかヘッドハンターになって第二のソニーが育つのを人材面から貢献したい、とよく言ってましたね。」とのこと。本人的にも真剣に転職を検討したのですが、ただ、年齢も若く、実ビジネスの経験もないこと、日本ではまだ終身雇用カルチャーが強固であった事などから断念し、とどまって社内のビジネス部門への異動をしました。89年のことでした。

<香港・UK駐在時代>

90年代後半は香港に赴任し、中国ビジネスを大きく伸ばした後にアジア通貨危機に見舞われるなどアップダウンの激しいビジネスを経験する中、中華系人材の離合集散などを観察できました。また、00年代前半はB2Cの映像ビジネス(FLAT TV, PJ)立上げ担当としてUKに駐在し、欧州現地工場や欧州各国の販社に足繁く通っていました。 ビジネスを進める傍ら、外から日本を見る機会に恵まれた貴重な時期でした。

UKではロンドン近郊に住みました。ロンドンはやはり金融の街で、内外に多くの金融マンの知己を得ましたが、残念ながらアングロサクソン系やユダヤ系が幅を利かせていることを痛感し、日本はやはり「ものづくり」産業の国際競争力(加えての「サービス」産業)を磨いていくことが第一プライオリティーと確信した時代でもあります。 (現在の私がエグゼクティブサーチで製造業を中心とした分野を担当しているのはそれが理由です)

また、UK勤務当時の上司含め周囲にヘッドハントされてきた方が多く居たのですが、自身のコアスキルを確立した優秀な人が多く、そういった方々が、活躍できる環境を求めて動いていく欧州・香港の労働市場を目の当たりにし、日本も早くこのようにならねば、と思っていました(その裏方として活躍するエグゼクティブサーチコンサルタント達の層の厚さにも目を見張りました)。金融の自由化(ビックバン)、ものの移動の自由化、などは日本でも進みましたが、人材市場の流動化については、まだまだ改善すべきことが沢山あるな、と痛感。日本でも、40代、30代後半を中心に、リーダーシップや専門性を持った人が、もっと機動的に動けるようになれ、充実感あるビジネスライフがとぎれることなく続けられる仕組みが作られないものか、と真剣に考え始めていました。

<日本に戻って>

数年前に日本へ戻った時、下記のような点で危機感を持ったことを覚えています。

1.終身雇用神話が崩壊する中、個人は自らの立ち位置(マーケットバリュー)を確認し、企業間を移ってでも最適解を求めねばならない時代がすでに来ているにもかかわらず、その媒介手段(エージェント機能)がまだ脆弱。

2.以前に比して国産企業においてもピンポイントで外から人材を持ってくるカルチャーが広がり始めてはいるものの、例えば製造業においては韓国勢との競争に加え、本命としての中国・インド等との世界戦争の只中にいる割には、必要な人材が必要な企業・組織にまだまだシフトしていない、という状態。

そして、上記のような昔からの問題意識に気持ちが向かっていく自分と、20年間勤めてきた会社への愛着、“とどまって為すべきことはまだある”という気持ち、その他諸々の葛藤の中で、転職すべきかどうかを迷う日々が始まりました。

―――――PartⅡに続く

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